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コンサル事業部の坂井です。
私は福井県出身で、新卒で銀行に入行して10年程度勤めていました。
福井(支店)⇒富山(支店)⇒北海道(支店)⇒東京(外部研修1年間)⇒本部(コンサル)と転勤を経験したのち、十勝が好きでこの地に移住してきました。
現在はM&Aや企業再生等の実務を担っており、年齢は37歳です。
元銀行員の観点から、金利上昇局面における考え方を整理していきたいと思います。
私が銀行に入行したのは2012年。
就職活動をしていた当時はリーマンショック後、東日本大震災も重なった年で新卒は非常に厳しい買い手有利のマーケットでした。
メガバンクでも当時の初任給が20万5千円程度だったと記憶しています。
2025年現在、大手では初任給も30万円前後まで上がってきており、ここ最近の人手不足、インフレの影響が顕著であることを示しています。
入行当初の仕事は、個人宅に飛び込み営業をして年金受取口座変更のお願いやカードローン、投資信託の購入や住宅ローンの借換などを推進していました。
リーマンショック後だったこともあり、投資信託を保有している人のほとんどが含み損(それも30-40%などのマイナス)を抱えていたことも覚えています。
最初の個人営業では知識や経験が不足しているので、足りない部分を足(機動力)や愛嬌(気合い)でカバーしてなんとか乗り切っていたことを懐かしく思います。
当時の営業活動や上司からのご指導は厳しいものもありましたが、社会人として自分の仕事の基礎を作ってきたものであり、ご指導をいただいた方々には今でも深く感謝しております。
2012年当時、日銀の政策金利はゼロ金利の状態であり、10年国債利回り0.7%、TIBORも1か月物で0.3%程度の水準だったようです。
2016年にはマイナス金利・イールドカーブコントロールの導入もあり政策金利はマイナス、10年国債利回りも0%程度に誘導、TIBOR1か月物もマイナスとなりました。
銀行を退職したのが2021年だったので、私の銀行員生活では「超低金利」が当たり前の世界でした。
そのような状況化で銀行は、「とにかく残高(ボリューム)を多く積む」という行動になりがちだったかと思います。
本業の貸出では利鞘が取れず収益が減少していくため、新しくコンサル事業(M&Aや経営コンサルなど)を自前で始めていった時期でもありました。
私個人としてもコンサル業務を学ぶために東京のコンサル会社に1年間修業にいかせてもらい、銀行本部でコンサル業務に従事していました。
2024年以降、日本は明確に金利上昇局面へと入りました。
日銀が長らく続けてきたマイナス金利政策は解除、2025年12月の政策金利は0.75%と30年振りの水準に引き上げられました。
10年国債利回りも2.0%と約20年振りの水準となっており、TIBORも1か月物で0.6%程度となっています(2025年12月時点)。
2026年以降もインフレが持続する可能性は高く、今後も賃金の上昇が持続すれば日銀の利上げは続き、金利も上昇するシナリオは高いと思います。
そのような状況化では銀行はボリュームを追うより金利収入や貸出先の選別・貸倒リスクなどにも敏感になっていきます。
金利上昇の影響は、借入している企業側では単に「支払利息が増える」だけではありません。
特に重要なのは、
・短期借入金の依存度
・運転資金の回転速度
・在庫の持ち方
です。
金利が上昇する局面では、「キャッシュが寝ている時間」が長い企業ほど、確実に苦しくなります。
では、北海道十勝地方で影響を受けやすい業種はどのようなものでしょうか。
➀卸売業(農業資材・農産物・水産物・飼料・肥料等)
・在庫金額が大きい
・一毛作の収穫など季節資金の需要があり短期借入金が膨らみやすい
・利幅が薄い
➁肉牛の肥育、畜産関連
・飼育期間が長く、現金化まで時間がかかる
・素牛の購入や飼料代など先行投資が大きい
・運転資金の大半を借入に依存
➂食品加工業、冷凍保管を伴う事業
・原材料在庫+製品在庫の二重構造
・倉庫費用、電力費などの固定費も上昇傾向
こういった業種では金利が0.5%あがるだけでも利益を簡単に圧迫して、構造的なダメージとなります。
今から取り組むべき財務戦略はどのようなものがあるのでしょうか。
➀短期借入金の構造を見直す
「短期借入金が多い=悪い」ではありません。
問題なのは、「短期で借りているが、実態は長期で使っている」ケースです。
これは金利上昇局面では極めて危険です。
本来は設備的な性格の資金や恒常的に発生する運転資金は、長期借入への組み替えを検討すべきタイミングかと思います。
また、遊休資産などがあれば売却し、財務のバランスを見直すことも必要かと思います。
➁「利益」ではなく「キャッシュ」を見る
金利上昇局面では、損益計算書よりもキャッシュフロー計算書が重要になります。
・売上が伸びているが、現金は増えていない
・在庫は適正か
・売掛金の回収条件は見直せないか
などはチェックすべきポイントです。
元銀行員の立場からすると、銀行が最もみているのは返済原資(フリー・キャッシュフロー)です。
➂銀行との「対話」を変える
金利が上がる局面では、銀行も経営者を選別します。
・数字を把握しているか
・キャッシュフローや商流を説明できるか
・課題を自覚しているか
など、銀行担当者に説明できるようにしておきましょう。
「なんとなく借りている」「決算書などの数字を把握していない」企業は、借入条件が悪化しやすくなる可能性があります。
時代の潮目が変わる今だからこそ、「準備をした企業」と「何もしなかった企業」の差は一気に開いていくと思います。
必要以上に恐れるものでもありませんが、早い段階で自社の経営・財務状況を把握し、何が課題で、どこに手を打つべきかを整理することが大切です。
弊社では様々な経営課題に対しての支援も実施しています。
税務・会計のみならず様々なバックグランドの実務経験を活かしながら、経営者の皆さまと一緒に考えていきたいと考えています。
気になる点があれば、どうぞお気軽にお声がけください。
(コンサル事業部:坂井 TEL:0155-24-3616)

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