TOPICSトピックス
M&A担当の坂井です。
高齢化社会が進む現代において、中小企業の「後継者がいない」という悩みは、もはや特別なことではありません。
十勝・道東・札幌圏のクライアントなどから、私たちのところにも毎月のように同じ相談が寄せられます。
・子どもに継ぐ意思がない
・従業員承継を考えたいが、任せられる人材がいない
・70歳を越えて体力的に厳しい
・事業は黒字だが後継者不在で将来が心配
・銀行から「そろそろ考えたほうが良い」と言われている
このような状況は、決して”経営者としての責任不足”ではありません。
むしろ、どれだけ事業が順調でも、後継者問題は企業規模に関係なく発生する非常に難しい課題です。
本記事では、私たちが北海道で実際に多数の事業承継・M&A支援を行ってきた実務経験から、「後継者が不在の会社がまず最初にやるべき5つ」を、できる限り具体的に整理します。
Ⅰ.自社の「いまの健康状態」を把握する(財務DDの前段階)
後継者問題の第一歩は、「いまの会社の状態を知る」ことから始まります。
経営者は日々の資金繰りや現場判断で忙しく、実は “自社の本当の状態”を意外と客観的に把握していないことが多いのです。
✔ チェックすべきポイント
・過去3期の売上、利益の推移
・借入金の状況(短期、長期のバランス)
・在庫や売掛金、買掛金の管理実態
・社長個人と会社の資金の分離状況
・役員報酬、役員退職金の積算余地
・節税対策の影響(過剰な節税は逆効果)
特に多いのが、「節税のために利益を抑え続けてきた結果、会社の本当の価値が見えない」というケース。
後継者不在の企業は、外部承継(M&A)が選択肢になる可能性が高いため、まずは現在地を正しく知ることが極めて重要です。
Ⅱ.事業の棚卸しをする(「何が魅力か」を言語化する)
M&Aを前提に考える必要はありませんが、後継者不在の企業では「事業がどんな価値を持っているか」を棚卸しすることが極めて重要です。
✔ 事業棚卸しの例
・主要な取引先と年間取引高
・営業利益率、粗利率
・会社の強み(技術、許認可、地域密着、独自性)
・コア人材
・品質、納期、地域評価
・オーナーに依存している業務はどれか
・将来の成長余地や不採算部門の切り分け
自社では当たり前でも、「外から見ると魅力が大きい」という企業は多いです。
特に北海道の場合、以下は買い手からよく評価されます。
・地域密着で数十年継続している
・粗利率が安定している
・許認可業種(建設、設備、水道、清掃、介護など)
・コア人材が在籍している
・競合が少ないエリアで顧客基盤が厚い
・官公庁、大口企業と安定した取引や実績がある
棚卸しをしてはじめて、「外部承継(M&A)」「内部承継」「廃業」などの選択肢を比較できるようになります。
Ⅲ.社長個人の「出口戦略」を整理する(お金・時間・気力)
後継者不在の企業で最初に必要なのは、社長自身の「人生の出口戦略」の整理です。
特に整理すべきは以下の3つ。
➀お金(個人の資産形成)
・役員退職金はいくら受け取れるか
・退職後の生活資金はどれくらい必要か
・子ども、配偶者へ残したい資産
・株式譲渡益の税負担(譲渡所得税20%)
・生命保険や不動産の処理
M&Aで譲渡益が2~3億円になるケースもありますが、退職金と組み合わせることで数千万円単位で手取りが変わります。
➁時間(いつまで経営に関わりたいか)
・1~2年は残る?
・すぐ引退したい?
・名誉会長として関わり続けたい?
・買い手側も「社長がどれくらい残るか」を重視します。
➂気力(働き方・家族)
・家族はどう考えているか
・子どもが戻ってくる可能性は本当にないか
・家族会議はしたか
・健康面は大丈夫か
先に社長の人生戦略を固めることで、最適な事業承継の形が自然と見えてきます。
Ⅳ.ステークホルダーへの影響を確認する
後継者不在の会社では、財務状況と同じくらい重要なのが「関係者への影響」です。
特に影響が大きいのは、
・従業員
・主要取引先
・地域コミュニティ
✔ 従業員の雇用維持も“最重要”
北海道では「従業員の雇用を守りたい」が最優先の経営者が多いです。
・主要人材を残せる体制か
・給与、待遇はどの範囲で維持できるか
・買い手の企業文化と合うか
実務上、PMIの成否はほぼ「人」で決まります。
後継者不在でも、従業員が残れる方向性を必ず確保すべきです。
Ⅴ.専門家とともに“選択肢”を整理する
後継者がいない企業には、実は選択肢がたくさんあります。
✔ 考えられる承継の方法
・親族承継(子ども)
・従業員承継(内部昇格)
・第三者承継(M&A)
・会社分割、ホールディングス化による次世代準備
・一部事業の売却
・廃業(清算)も含めた最適化
ここで重要なのは、専門家と相談して「選択肢ごとのメリット・デメリット」を整理することです。
まとめ:後継者がいない会社が最初にやるべき5つ
最後に、整理します。
Ⅰ.自社の健康状態を把握する
(数字・会計処理・資金繰り・借入・個人保証)
Ⅱ.事業の棚卸しをする
(取引先・強み・人材・許認可・オーナー依存)
Ⅲ.社長自身の“出口戦略”を整理する
(お金・時間・気力・家族の意思)
Ⅳ.ステークホルダーへの影響を確認する
(従業員・地域・主要取引先)
Ⅴ.専門家とともに最適な選択肢を検討する
(親族承継・従業員承継・M&A・組織再編など)
この5つの準備を進めることで、後継者が不在でも、経営者自身にとっても、従業員にとっても、最適な出口が見えるようになります。
最後に:この記事を読んだ経営者様へ
もし今、
・後継者がいなくて将来が不安
・M&Aを選択肢にしてよいかわからない
・まず何から始めればよいかわからない
・銀行から相談を勧められた
・税務や財務の整理が必要だと感じている
といった不安があれば、
一度、早い段階で専門家に相談することを強くおすすめします。
落ち着いた環境で現状を整理するだけでも、「いま何をすべきか」が明確になります。
私たちは、北海道全域でM&A・事業承継・財務DD・企業価値評価・資金繰り改善・銀行交渉・PMI・組織再編まで、すべてをワンストップで支援している専門家集団です。
・売り手、買い手の双方に寄り添う丁寧な進め方
・税務、財務、法務、労務まで一気通貫で支援できる体制
・地域金融機関からの紹介も多数(年間30件以上)
・北海道の事業承継実務に精通したコンサルタントが担当
という体制で、これまで多くの企業の“次の世代へのバトン渡し”をお手伝いしてきました。
後継者不在は、決して珍しい悩みではありません。
ただ、早めに動いた企業ほど、選べる選択肢が大きく広がります。
「まずは話だけでも聞いてみたい」
「本当にうちの会社に後継者が必要なのか知りたい」
そうした軽いご相談からでも構いません。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
貴社の未来にとって最適な道筋を、一緒に考えさせていただきます。
(お問合せ先:TEL0155-24-3616 FAS部・坂井)
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